黒猫-私は女王-
あの時、神夜に聞かせて貰った音声。

『裏切ったな!』

微かだが男の声が聞き取れた。
その声は天宮も伊井田もよく知る人物。
、、、言うまでも無いが、その声は紛れも無い三瀬隆一の物だった。

彼は何らかの方法で録音テープを持ち込み、個室を出た廊下にあるダイヤル式の電話で、警視庁に犯行予告をしてきたのだ。
三瀬は刑務所から出られないのだから、盗みは黒猫本人だろう。

「無いわね、、、」

天宮は部屋にある机の周辺を探しているが、めぼしいものは何も無い。
それと同様に、伊井田は壁に木の板を打ち付けただけの質素な棚を探しているが、何も見当たらない。
この部屋以外の所は他の刑事や鑑識が捜索しているが、特に報告は無い。

「何故三瀬は自殺なんてしたんでしょう?」

突然伊井田からの答えの出ない質問だった。

「それは私達に部下だって事がバレたからなんじゃないの?」

「僕も最初はそう思ってたんですけど、どうも引っかかるんですよ」

「何が引っかかるの?」

「三瀬はどうして録音テープを流してる途中で喋ったんですかね?、、、自殺も黒猫の作戦だったのでしょうか?」
< 27 / 42 >

この作品をシェア

pagetop