黒猫-私は女王-

「何でそんな事、、、」

伊井田は聞く。

「僕の憶測だけど、黒猫の正体は亜理紗なんじゃないかなぁって思うんだ」

伊井田は心を見透かされている気がした。

「あぁー、でも亜理紗が黒猫だったら、顔出さないか」

忘れてたかの様に言うと、伊井田の肩をポンポン叩いて、

「俺等で黒猫の正体突き止めような」

そう言って徳井はトイレを出て行った。

伊井田は洗面台の前で徳井の出て行った扉を呆然と眺めた。
壁に掛かっている鏡に視線を移す。
鏡に映った伊井田の顔は恐怖に怯えていた。
きっと天宮を見た時からこの表情なのだろう。
それで徳井はあんな事を、、、。

「鋭すぎるだろ、、、」

伊井田は鏡に映る自分の目を見詰めながら呟いた。



伊井田もトイレを出ると、壁に凭れて右手の爪を眺めている天宮と目が合った。

「やっと出て来た。大丈夫?」

天宮は此方に歩み寄ってきた。

「もう大丈夫です。ご心配お掛けしました」

頭を下げて謝る伊井田に優しく微笑み、

「別にパートナーなんだから心配するのは当たり前でしょ?、、、それより、さっき電話があって三瀬のお腹の中からテープが出てきたって」

天宮は嬉しそうに言う。
伊井田は、黒猫の正体が天宮である確信が少し薄れた。

< 38 / 42 >

この作品をシェア

pagetop