─ Alice ?─



『あっ…はは、言い過ぎたよ。ごめんよビル。』



爬虫類系の男をビルと呼び、明らかに態度を急変させた黒兎さん。


分が悪い、と察知したのだろうか。




「相変わらず都合のいい兎だ。まあいいだろう。ちょうど話をしなければ、と思っていた。この国を、これ以上狂わされては堪らない。」



少し顔をしかめ、黒兎さんと私を見やる。




『狂わせたのは僕じゃないよ。最初にゲームを始めたのは女王じゃないか。』


「…ゲーム?」




『アリスが誰を選ぶか、ってやつだよ。ほら、初代の女王…腐った奴がいたじゃないか。』



冷たい瞳で微笑む黒兎さん。



その姿はあまりにも寂しそうで、悲しみが込み上げてきた。



「その腐った女王を上手く使って、もっと可笑しなことをしている貴様は女王以下の葛同然だ。」



『あははっ!そうかもね。女王だけでなくアリスまで利用して…僕は一体何を考えているのだろうね。』


ビルさんの座る箱を見つめ、目を細めながら笑う。





『ねえ、ビル。僕は罪人、犯罪者だ。そんな罪人の最後の願い、聞いてくれないかい?』
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