偽りの仲、過去への決別
「なぜ、毎日俺達の後をついてくるんだ。」 松山は、まだ怒っていた。 ヒロは、松山の怒りを抑える為に、嘘をつくことを、考えていた。 松山は、単純な男だとヒロは分析していた。ここはやはり…。 「いや、松山君に話さないといけないことがあって。」ヒロは意味ありげな感じを醸し出した。 松山は、怒りを忘れて、ヒロの言葉に食い付いてきた。 ヒロはこの単純な男をどう料理するかを考えていた。 ヒロは、生きて行く為の嘘は致し方ないと思っていた。 兄達は、いつも中学校で獲物を探していた。 お金を持っている同級生には、優しく接して、懐に入るのが、うまかった。 いつも調子の良いことを言っては、おごってもらっていた。 長男と次男は、おこずかいを、父親が死んで以来、貰ったことがなかった。だから、どんな形であろうが、お金がほしかった。 人に施しを受けようが、何でもいいからヒロ達兄弟はお金がほしかった。 母親の収入では、その日暮らしで、給食費用も、まともに払えずにいた。 生活保護を受けていたが、5人の子供を抱えているヒロの家族には、まったくといっていいほど、足りなかった。 父親の残した慰謝料も、とっくに底をついていた。 頼る親戚もいないヒロ達家族は、この町から逃げることもできず、細々と生きて行くしか方法がなかった。 兄達には、もう1つの顔があった。 それは、ヒロの小学校の生徒から、かつあげをすることだった。 ヒロは兄達のために片棒を担いでいた。 お金を持っていそうな生徒を探し出して、兄達に情報をリークすることだった。 ヒロの情報は、いつも確かだった。それだけ、よく人を見る観察眼が発達していた。 だから、松山の人の良さがちゃんとわかるのであった。 兄達は、ヒロの情報に基づいて、獲物を襲った。 学校の帰り道、一人になったところを待ち伏せして襲った。 兄達は、容赦なかった。金銭を出すまで殴った。金銭を出した後は、誰にも話さないように、脅した。