偽りの仲、過去への決別
兄達は、顔がばれないように、学帽を深くかぶっていた。 だから相手が、誰かに話しても、ばれる恐れはなかった。 兄達はいつも襲ったわけではなかった。 しかし、いつまでもこんなことがうまくいくわけがなかった。 松山は、ヒロにとって、兄達がやっていることを忘れられる存在だった。 松山といると心が落ち着き、精神が浄化されるような気がした。 ヒロにとって、松山は、ひょっとして、自分を理解してくれる唯一の人間だと思っていた。 そんな松山が、今、ヒロの目の前にいる。 どうにかして、この場面をうまく切り抜けることが、ヒロにとって重要であった。 「話してなんだ。」 松山は、早く話しを聞いてこの時は、まだカズの後を追いかけようか、迷っていた。 「あのさあ、恭子のことだけど。」 ヒロは、松山が今にでもカズを追いかけようとしているのがわかっていた。 しかし、恭子の話題は持ち出されると、松山は早くこの場から逃げたい素振りが、完全に止まった。「恭子に聞いたんだ、本心を。」 「俺が振られたこと知ってんだろう。お前。」 ヒロはそんなことはなかったように話した。 「俺、恭子に聞いたんだ。本当は松山のことが好きなんだって。でも恥ずかしいみたいで。だからあの時、あんな返事したみたいだよ。」 単純な松山でも、こんな都合の良い話しを信じられなかった。大体、ヒロと恭子が話ししているところを見たこともないのに。「じゃあーなぜ恭子ちゃんは、俺を振ったこといいふらかすんだよ。」「あれは、恭子が後悔して、友達に相談して話しを。」 ヒロは、話しを止めた。松山のヒロに対する態度と、話しを聞きたいと思う探求心を探る為だ。 松山の疑問も薄れ始めていた。「松山が振られたことをばらしたのは、秀雄なんだ。」「どうして秀雄がそんなこと言うんだ。」 「だから嫉妬したんだよ、秀雄は。だから怒って言ってしまったみたいだよ。」「あの野郎ー。」 松山は秀雄のことは親しくないが知っていた。「おまけに、恭子に暴言吐くし、大変だったよ。」 ヒロは確信した。松山がヒロのことを信じて、カズのことを忘れてくれることを。
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