偽りの仲、過去への決別
洋二の祖父は、10店舗の信用組合の理事長になった。 今でこそこの町の有力者であったが、ここまで会社を大きくするには、多少のあくどいこともやってきた。 今は、洋二の父親に理事長職を譲っているが、実権はまだ祖父が握っていた。 祖父と一緒に暮らす洋二はなにかにつれ、祖父の影響を受けて育った。 父親の後を継ぐ洋二は、祖父の言いつけに刃向かうことができなかった。 洋二の親達さえ祖父の言いなりだった。洋二の父親は、とてもやさしく、祖父とは正反対の人だった。 祖父はそんな父親をいつも罵っていた。父親はただ黙っていた。仕事に関して厳しさよりやさしさが表にでるからだ。 信用組合もこの町の不景気を受け、会社全体の見直しを求められていた。 父親はなるべく社会のリストラを実行したくなかった。いやしなくてはならないことなど重々承知していた。 そんな判断もできない父親を祖父はいつも叱り続けていた。洋二にとって祖父も父親も大切な存在だった。 だからいつも家では、黙っていた。なにか話すと、余計に事態を混乱させてしまうと洋二は知らぬ間に気を使っていた。 家でも、学校でも優等生を演じることに限界を感じ始めていた。 洋二は本当はいつも孤独を味わっていた。よく周りを見て考えてみると友達がいなかったことに。 洋二はクラスメイトによく話しかけられたり、いつも学級委員に祭り上げられていた。しかしそんなことが本当に友達なのか、疑問に思い始めていた。 カズに軽くあしらわれ、結衣に簡単に振られた。こんなことは今までなく、惨めな思いをしたのも始めてだった。 結局、クラスメイトのほとんどが、カズや結衣同様本当は軽くあしらわれていたのかも知れないと思い始めていた。中身のない人間関係を洋二と結衣に教えられる結果となった。 洋二のクラスメイトの何人かは、洋二の信用組合にお金を借りている。そして学校も町有力者である祖父になにかと寄付を受けていた。 後ろだてがなければ、洋二は誰にも相手されなかったんじゃないかと不安な気持ちがよぎっていた。
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