偽りの仲、過去への決別
カズは、はっきりしない洋二に、なぜか怒りより、悲しさを感じていた。 カズは、洋二が裸の王様にしか見えなかった。クラスメイト達には、何事に置いても祭り上げられていた。そんな洋二が気の毒に見えた。 洋二は、カズに何か話さなければならないと思っていたが、何も頭に浮かばなかった。 カズは、洋二がなぜ自分達に話しかけてくるのかよくわからなかった。確かにクラスで浮いている存在なのは、わかっていたが、どうしてこんなにがむしゃらに話しかけてくるのかよくわからなかった。 「ねえー話すことないなら、あっちに行ってくれる学級委員さん。」 カズは洋二を見ずに言った。 カズは何も言わない洋二が自分の父親と重なっていた。 洋二とカズの父親は年もバックグランドも違うが、カズはまだ多角的視野で人を観察するほどの年齢に達していなかった。 いやカズは不甲斐ない父親の形が、いつまでも脳裏から離れずトラウマになり、はっきりしない洋二を見ると、父親の存在が浮かび上がってくる。 洋二に恨みはないが、カズにとっては関わってほしくない人間であった。 何事に置いても白黒つけるのが、良い結果を出すことはない。人間の社会では灰色のほうが、うまくいくことのほうが多い。 個人が社会に身を置く上での考えであり、社会とうまく付き合っていくためのマニュアルでしかない。 個人が個人とつながりを持つ場合、結局はお互いの信頼や信用を重んじてしまう。 人間の社会に対する矛盾が個人の間では正当化されてしまう。 それが建て前と本音と割り切った考えであれば、なぜもっと割り切った人間同士の付き合いで終わろうとしないのか。 相手になぜ白黒つけることを強要するのか。 誰もが心のどこかで自分に対しては、正直になってくれることを渇望しているからだろう。 個人が個人に求めていることが、社会にとっては悪影響を及ぼすことがある。 それは、あまりにも個人を尊重するばかり自由を履き違えてしまうことだ。 個人においての自由と社会においての自由は違う。