偽りの仲、過去への決別
結衣に話しかけるのならばわかるが。 それに自分に話しかけてきた時は、あっさり引き下がったのに、カズの時はなかなか引き下がらない洋二に怒っていた。 松山はとにかく気に入らなかった。もしこのままカズが間違いを起こし、洋二と仲良くなったりしたらと想像するだけで内心はどきどきの連続であった。 カズはなぜこんなに自分にこだわるのか洋二の意図をつかみかねてた。 しかし結衣が目的で近寄ってきたわけではないことだけはカズにもわかっていた。 結衣が始めて口を開いた。 「じゃあ、すぐに仲良くならなくていいから、徐々に友達になって行けば……」 結衣は提案した。 カズは果たしてこの洋二と仲良くなれるのか疑問であった。 逆に洋二は笑顔で頷いた。 カズは不思議な感じがした。何かをカズに求めようとしているのか、洋二は今までと違い積極的に見えた。 洋二はカズに今の自分に足りないものはどこなのか、無意識に求めようとしていた。 家での自分、学校での自分、どこを探しても自分の居所がなかった。 カズが自力で自分の居所を切り開く姿にたくましさを感じていた。 カズと接することによって、自分自身の意識が変われることを心のどこかで期待している洋二がいることも確かであった。 松山の不愉快な表情を見るにつれ、ヒロは焦りを募らせるばかりであった。 ヒロには思惑があった。とにかくカズを早く松山の前から排除することが一番だと思っていた。 それには、兄貴達を使うしかないと。 ヒロは自分のクラスに戻ると恭子が待っていた。 恭子は洋二の様子をいつものように聴くためだ。 しかし、ヒロはカズのことで頭が一杯であった。 恭子はヒロが黙っている様子を見て不安感がよぎった。「何かあったの。」 ヒロは恭子の声を聞いて、我に返った。 「いや何もないよ。ただあの男は今……。」 「洋二君に何かあったの。」「知っているだろう隣りのクラスの転校生。そいつと仲良くなりたいみたいで、必死だよ。」 ヒロは自分で言って驚いた。なぜ恭子に本当のことを言ってしまったのか。
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