偽りの仲、過去への決別
洋二はとにかくはったりを続けた。 カズを信じている洋二は、証拠はないが、絶対ヒロが関わっていると確信していた。 ヒロはどこまで洋二が事件を把握しているのか探りを入れてきた。 「じゃあ言ってみろよ。」 ヒロは賭けに出た。松山の疑問を打ち消す為と、洋二が本当にどこまで知り得ているかの選別でもあった。 ヒロには危険な賭けに出るだけの自信があった。 警察が何回もヒロに事情を聴いてきた。その内容は兄貴達が一方的に襲ったのにその事実をまったく警察は把握していないと思った。 カズの悪口を言っただけで警察は興味を持った。ヒロはうまくいけばすべてカズに罪を着せることができると踏んでいた。 国家権力が事件を把握していないのに、洋二が知っていること自体有り得なかった。 あの時、本当にあの場から逃げてよかったとヒロは思った。 それにカズが目を覚ましてもけんか両成敗でカズと兄貴達は同じ罪になるかもしれない。 たとえカズが学校で被害者面しても、みんなが同情するわけがない。 カズは新参者でそんなに友達もいない。 もしカズがヒロを責めても、誰も見ていないこの事件を、徹底的に否定する自信がヒロにはあった。 うまくやればヒロに同情が集まる可能性もあると思っていた。 「凄い自信だなあ。嘘ばっかりついていると後々大変だなあ。」 洋二は顔色がもとに戻ったヒロが憎たらしくかった。 どこからこんな自信が出てくるのか。「ほら何にもないじゃないか。」 ヒロは安心した。やっぱり洋二の言うことははったりであった。自分が平気で嘘をつく人間は、相手の嘘を見抜くのは簡単であった。「確かに何も証拠はないけど、お前が嘘を言っているのは絶対だよ。」 洋二はそれでも引き下がるつもりはなかった。逆にヒロの少しも悪びれない態度により一層疑問が大きくなった。 松山は迷っていた。よく考えてみるとヒロは洋二の言う通り嘘をついているみたいに見えた。しかし人を疑うとすべてが嘘に見えることが嫌でたまらなかった。
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