偽りの仲、過去への決別
カズも祖父が本当は厄介なことに巻き込まれたくないことを学んだ。 いつも優しい祖父にこれ以上の負担を持たせることはかわいそうだと思った。 カズは眠りの中にいた。 なんて気持ちいいんだ、誰にも会わず1人でいることが。 もうカズは疲れていた。目を覚ますと現実が待ち構えている。そんな世界に戻って何になるんだろう。 これからどうなるんだろう。カズは正直ちゃんと生きていく自信がなかった。 これから受験や人間関係をきちんとこなすことができるのか、不安になっていた。 ヒロの兄貴達とけんかして痛い目にあったが、カズは実は本当はいい機会に巡り合えたと思っていた。 やっと少しでも現実から逃げることができた。 自分で考えて色々な事柄から逃げれる程カズにはまだ知恵がなかった。 まだ生きる為の知恵がなかった。 逃げれることも解決することもできないカズは現実の壁に苦しんでいた。 誰かに助けて欲しかった。松山や結衣みたいな子供ではなく、大人にだ。 しかしカズは大人に甘えることができなかった。 心の中で、いつも思っていても、行動に移すことができずにいた。 カズ自身の大人への不安感を払拭しない限り足を踏み出すことさえできずにいた。 運が悪いのか、縁がないのか、カズの周りに信頼できる大人はあまりいなかった。 松山先生に頼ろうと思った時もあった。 でも頼ろうとはしなかった。遠慮したのだ。 カズ自身が自分の問題点を洗いざらい話せる程の勇気を持ち合わせてはいなかった。 たくさん父親や母親の悪口を他人に話せることなんてできるわけがなかった。 親の悪口を話すと、自分自身のアイデンティティが問われ、今まで精一杯生きてきたことが無に戻りそうにに思えた。 自分の原点は、どんなに否定しても、父親と母親から始まっている。その事実だけは変わらない。 両親の不甲斐なさを人に話すことが自分を削る行為になってしまうみたいに思えた。だから自分の考えを素直に話せずにいた。 本当は何でも話しをしたかった。大人から何でも習いたかった。大人を尊敬したかった。