偽りの仲、過去への決別
「ねえ~洋二君一緒に行かない。」 結衣の突然な会話に洋二は驚きを隠せずにいた。 洋二はうれしかった。本音は2人に話しかけて欲しかった。それがこんなに早く実現するなんて思ってもいなかった。 洋二は松山の様子を伺った。松山は結衣の後ろにいた。
「松山君が誘ってみようと言ったの。それで私が声をかけたの。」 結衣は松山を見た。松山は照れ笑いをした。 洋二はこのチャンスを生かそうと思った。何も考えずただカズに会う為に行動してみようと思った。だから2人に対して素直に従おうと決意した。
これから先の問題なんてどうにでもなると信じていた。 「じゃあ、カズの病院に行くぞ。」 洋二は笑った。 カズの意識が戻ろうとしていた。なぜか松山の声がノイズを帯びて聞こえてきた。
不思議な思いがした。けんかしていた松山の声が聞こえてくることが。しかし心地よく、早く松山に会いたい気分になった。 カズは目を覚ました。ここがどこなのかわからずにいた。まだ意識がぼんやりしているのか、なぜ病院にいるのか、把握するまで時間がかかった。
カズが目覚めたのを皮切りにたくさん人々が病室に来航した。もちろん病院の関係者が主であった。 祖父は涙を流して喜んでいた。兄は今までにない笑顔でカズを見ていた。 カズは父親の姿も発見した。父親は祖父や兄の後方でカズの様子を伺っていた。
父親はカズに何か言いたそうだった。 しかし何もいわず、病室に入ってくる医者や看護婦に丁寧に挨拶をしていた。 松山達はいかにしてカズの病室に潜り込むかを話し合っていた。 もう正面から入ることは無理だと判断した。 松山のこれまでの経験で、業務交代の為、看護婦達がいない夕方の時間帯を狙うことにした。 洋二には作戦があった。ベランダを伝ってカズの病室に入りこむ作戦だ。 洋二は病院の内部に詳しかった。だから2人に自分の作戦を売り込んだ。 2人は洋二の作戦に賛同した。
カズは受け持ちの看護婦に話しかけてた。まだ新人らしく仕事のやり方がぎこちなかった。 カズの点滴は漏らすし、採血の時は手が震えていた。 きっとカズが眠っている間は緊張が溶けていたが、カズが目覚めたおかげで一気に緊張が吹き出した感じであった。
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