偽りの仲、過去への決別
「僕が入院している時、学校の友達が尋ねて来なかった。」 カズは松山の声を聞いていた。だから質問したのだ。 看護婦は黙っていた。カズの質問が聞こえないのだろうか。 看護婦は何も答えずに病室を出て行った。 急ぎ足でナースステションにもどると婦長に向かって言った。 「婦長、カズ君が学校の誰かが尋ねてこなかったか質問されました。」 「それで久保田さん何て答えたの。」 婦長はカズに真実を伝えなければならないと思っていた。 松山の訪問がいかに無茶で許し難い行為であったことを理解させなければならない。 そうでないと松山の行為が正当化され、自分の立場が危うくなる。 これだけ事を大きくしてしまった自分が責任のすり替えや認識の甘さを追求されることは許されない。
だからとりあえずカズだけでも松山の誤った行動に対して肯定させなければならない。 このまま松山が黙って引き下がるとは思っていなかった。 婦長はもうひとつ気掛かりがあった。自分の存在が松山先生に知られているのか、知られていないのか。
婦長は憂鬱であった。世話になった人の子供と争いを起こしたからである。 ここはひとつ松山に謝ってもよかったが、ここまで築き上げたイメージを壊すことに抵抗があった。 組織に準じる身としては、全体のバランスを考え、指導するのが婦長の仕事だと思っていた。 特に久保田みたいな若い人間には威厳を見せることが重要であった。 少しでもミスや甘い考えを見せると、久保田や若い看護婦達は組織にとって危険な存在になりえる。 人の命を預かる以上小さなミスも命とりになる。 だからいつも婦長の威厳を最大限に生かし、緊張感を持たせ、集中力をきらせないように指導した。 だから松山に対して行き過ぎがあっても謝ることなんかできるわけがなかった。
婦長はカズの病室に久保田とともに向かった。ここで新人の久保田にどんな形でも綻びを見せるといけないことを学ばせようと思った。 松山と洋二と結衣の3人は病院の裏庭にいた。 洋二の指示のもと、裏庭を抜けると、建物の片隅に非常階段があった。
だからとりあえずカズだけでも松山の誤った行動に対して肯定させなければならない。 このまま松山が黙って引き下がるとは思っていなかった。 婦長はもうひとつ気掛かりがあった。自分の存在が松山先生に知られているのか、知られていないのか。
婦長は憂鬱であった。世話になった人の子供と争いを起こしたからである。 ここはひとつ松山に謝ってもよかったが、ここまで築き上げたイメージを壊すことに抵抗があった。 組織に準じる身としては、全体のバランスを考え、指導するのが婦長の仕事だと思っていた。 特に久保田みたいな若い人間には威厳を見せることが重要であった。 少しでもミスや甘い考えを見せると、久保田や若い看護婦達は組織にとって危険な存在になりえる。 人の命を預かる以上小さなミスも命とりになる。 だからいつも婦長の威厳を最大限に生かし、緊張感を持たせ、集中力をきらせないように指導した。 だから松山に対して行き過ぎがあっても謝ることなんかできるわけがなかった。
婦長はカズの病室に久保田とともに向かった。ここで新人の久保田にどんな形でも綻びを見せるといけないことを学ばせようと思った。 松山と洋二と結衣の3人は病院の裏庭にいた。 洋二の指示のもと、裏庭を抜けると、建物の片隅に非常階段があった。