姫さんの奴隷様っ!
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二人の門番は、早朝からの来訪者が迫っていることなど露知らず、夢の世界へ旅立っていた。
近付く影にも足音にも気付かずに眠りこけていた門番であったが、不意に掛けられた声で慌てて目を覚ます。
「西門の開放を願いたい」
眼前には白い布で顔と髪を隠した人物と、それに連なる二人の青年。そして見るからに怪しげな人物から放たれた威圧的な低音は、門番達の緩んだ警戒心を煽るには十分だった。
「こ、このような時刻に何用だ!」
「あ、怪しい奴め!」
門番達はたじろぎながらも口々に食ってかかるが、それに腹を立てたのは最初に門の開放を願い出た『テルミット』ではなく、『テルミット』の後に控える黒髪の青年ウヅキだった。
「無礼者ッ!このお方をどなたと心得るッ!」
「まぁまぁ。その人達は、己の職務を全うしよーとしてるだけなんだからさぁ、怒らないであげたら?こーんな目付きの悪い人見付けたら、誰でも疑いたくなるって〜!」
キサは、ケラケラと笑いながら組んだ腕を頭の後ろに持っていく。彼は、一触即発の状況にあるウヅキと門番達のやり取りを楽しんでいるようだ。
しかし、門番達に助け舟を出したようで、実は怒り心頭のウヅキに油を注ぐ発言をしたことに本人は気付いていない。
「貴様ッ!俺に喧嘩を売っているのか?」
「そーんなわけないだろー?俺は勝てる戦しかしない主義なんです〜!だいたいだなぁ、目付きが悪い人がウヅキだなんて一言も言ってないじゃん。あ、少しは自覚があったとか?アッハッハ」
おどけたように笑って背中を思い切りたたくキサに、ウヅキは殺意が芽生えたことは言うまでもない。
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