雪情
【カモシカー10】


まあ
吹雪にさえならなければ
雪男が現れる心配も
ないだろうし、

これ以上この刑事を
説得させる自信がない。



それに、
これだけの人数に
プロの猟師に刑事。


何かあっても
何とかしてくれるだろう



「はいはい」



と白井は
勝手に一人で
納得したように呟いた。



そして
一同はまた列を作り、
山を下り始めた。



一度来た道は
覚えているせいか
とても進むのが早く感じ

田崎達はすぐに森を抜け
雪の広がる
広場に戻ってきた。



「う~ん……」


と田崎は唸った。


先程と比べて
天気が良くないように
見えたからである。



「何か
さっきより雲行きが
怪しくないか?

これ以上は捜索無理だな」



ここぞとばかりに
白井は言った。



「白井よ
勝手に決めるな。

大久保さん、
これは降りますかな?」



「難しいですね。

何とも言えませんが、
まだ吹雪にならないと
思いますよ」



大久保は
雲を眺めながら言った。


「では早めに
行くとしよう」


また
降るか降らないか
微妙な天気だが、

田崎の一言で
決まってしまった。



「おいおい本気かよ?

雪が降ったら
どうするんだ?」


白井はそう言うが、
田崎の考えは
変わらなかった。


「早めに
捜索を切り上げるから
もう少し頑張れ」



田崎は
白井を納得させるように
言った。



「だけどなあ…」



まてよ……



そこで白井は考えた。



これで家に戻っても、
また晴れた時に
出直す羽目になるが、

今捜索して
早めに切り上げさせて
しまえば、

もう捜索に来なくて
済むかもしれない。


そう考えていると、
田崎が覗き込んできた。



「だけど何だね?」



「…いや何でもねえよ。

なら早く行こうぜ」


白井は
早く済ませてしまう為に

田崎の案を
飲むことにした
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