Painful Love※修正完了※

まさかあのまま受けずに帰った、なんて思うはずがない。


結局、どこへ行ったのか。

どこに住んでいるのか、


別の大学に行ったのか就職したのか、


何も知らないまま。


俺は大学生になった。






大学に入っても頭の中を占める大半は時雨の心配。

我慢してないか、まだ親を失った時の罪悪感に苦しんでないか、

辛い思いをしていないか、泣いてないか。


今時雨は泣いているかもしれない、苦しんでいるかもしれない。


そう思えば『俺だけがこうしてヘラヘラ遊んで良いのか』なんて思ってきて、遊びの誘いも全て断っていた。

俺が頼りないから時雨が消えた。

所詮、一緒に居て慰めてやる事しか出来なかったガキだったから。


俺がしっかりできれば。


大人になれれば、落ち着けば。


早く、時雨が頼れるような男になる為に必死だった。

だけど、たまたま強引に秀に連れて来られたカラオケに居た松石…佐奈子は俺の中に踏み込んできた。


俺はさっさと帰ったけれど、


後から聞けば、あのあと馬鹿秀が俺と時雨の事を話したらしい。

それを聞いて何を思ったのか

無駄にしつこく話し掛けてくる佐奈子を、馬鹿な俺は冷たく突き放す事が出来なかった。


俺の冷たい態度で人を傷付けてしまう。


そう思うとどこか甘くなって。





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