Painful Love※修正完了※
「何も出来ない事無い。……ちゃんと、考えてるよ」
高校生の時雨に消えられた時と今はもう違う。
時雨が成長していたように、
俺も少しは成長したんだ。
ただ時雨が戻ってくるのを待つだけの男には……もうならない。
「……元に戻った方がいいよ」
「え?」
「拓斗。そうやって大人ぶった口調とかじゃなくて。高校生の時みたいに、秀君が言っていたように明るい拓斗に、ね」
「口調?」
「うん。時雨さんは別に、拓斗が頼りないから消えたとかじゃないから。そんな作ったような微妙な笑顔じゃなくて、自然の……」
振られた女は強いのだろうか。
さっきまで弱々しかったのに、
強気で俺にズバズバ言ってくる。
佐奈子って、こんな奴だった……?
「最後に元の拓斗で何か言ってよ」
バッグを持ちながら要求してくるのを見て、
佐奈子はもう帰る気だと察する。
何か言ってよ、と言われても……。
自覚は無かったし、
元の、と言われても難しい。
とにかく、何か言おうと少し考えて、一番良いと思った言葉。
涙目の佐奈子を見て……
「―――ありがとな」
これまでの、感謝の言葉。
と、精一杯の笑顔で。
「うん。そっちの方が拓斗らしい」
「そう?」
「うん。……帰る」
「あ、送る」
立ち上がった佐奈子に、俺も立ち上がれば、
佐奈子は首を横に振る。
「良い。もう優しくしないで。一人で帰れるから……見送りも良い」
ゆっくりとドアへと歩いていく佐奈子に、俺は立ち尽くす。