鏡村【短編】
あの男に気付かれたら、私は殺されてしまうのだろうか。


一刻の猶予も許されない。


私は草陰から出ると、まだ残っている鏡を急いで見て回る。


笑っている。


これも。


これも私じゃない。


私は背後が気になっていた。


そういえば、鏡を割る音がしなくなった。


心臓の音が激しくなる。


バクバクと鳴る心臓の振動と体の震えが増した。


走りながら、後ろを振り返る。


居ない。


どこ?


足を止め、男が居たはずの場所に目線を集中する。


目を離してはならなかったのに。


どこからかアイツが見てるかもしれない。


怖いなんてものじゃない。


生きた心地がしなかった。



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