鏡村【短編】
私は私の鏡を見つけるしか他ない。


この村の住人に見つかる前に。


捕まる前に早く。


私は再び進んでいた道へと体を向けた。


視線は地面を向いていた。


後悔した。


自分のではない足が見える。


声にならない悲鳴を上げた。


それが自分の喉の奥から出たのだと知ったのは後から。


ボロボロになった靴を履いた大きな足。


自分より遥かに高い身長なのだと直感した。


手には鋭い刃物。


どうして……


私なのだろう。


顔をあげる速度が凄く遅く感じる。


男の口角がつり上がるのが見えた。



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