ADULT CHILDREN

息を殺して覗く視線の先にはいつもの席に向かい合い座る父と母の姿。


いつもと違うのは、ただならぬ空気と父の顔。

優しげに垂れた目は赤く充血し、下唇を噛み唇をきゅっと紡いでいた。


父のそんな顔を見たのは初めてで
余計に鼓動が速まる。


母は先程見ていた一枚の紙を差し出した。


「…どういう事?」


黙って両手で額を押さえ俯く父が
その紙を見たのか見ていないのかはわからない。

ただ顔を赤くして黙って俯いている。


「黙っててもわからないでしょう。説明して。どういう事…?家賃3ヶ月滞納って」


母が手にしていた紙は家賃の滞納を知らせる紙だった。


それを知り、
知識のない頭を存分に働かせそれが何を指すのか答えを見つける前に
父が視線を落としたまま口を開いた。





「借金がある」



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