ADULT CHILDREN
「どうしたの?」


眉間にシワを寄せ何か言いたげなその顔に問いかけた。


「いや。もしかして何かあった?」


「え?」


「急に住むとか言い出したから。俺喜んでたけど…何
かあったんじゃないの?」



「いや。別に」


普段よりお風呂の時間が長かったのはそんな事を一人考えていたからか。よそよそしくクロに視線を逸らした私のその違和感から佐藤さんは追及してきた。



「いや絶対何かあったでしょ?」



「別に。何もないって」


話すつもりはなかった。


「本当に?」


「うん」


「本当の本当に?」


「うん」



「本当の本当の本当に?」


だけど、佐藤さんはいつもこうだ。
いつも、本物の私を見抜こうとする。



「話したって意味ないでしょ!」




真っ直ぐ顔を見る事も出来ず、視線を落とし半分だけ顔を向けた。
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