流れ橋
彼は、自転車をとめた。前を真っ直ぐ見たまま話した。

わたしは、大きく首をふった。「大丈夫だよ。でも、お願いがあるの。少しの時間でいい。一分でいいから、わたしが家の様子を見て、外に出てくるまで、待っててくれる?お願い。」わたしは、少し恐かった。何か、嫌な予感がするのだ。

「いいよ。家に着いたら外で、待ってるから。」そういって、また、自転車をこぎだした。

「ありがとう。」わたしは、少しだけ勇気が湧いてきたのを感じた。

もうすぐ行ったら、小川にたどり着く。ここまで、時計を見たら8分しかたってない。あまりの早さに、わたしは驚いた。そして、流れて橋を渡り真っ直ぐ行けば、家につく。

流れ橋を渡る時、田中俊は、何か思い出したみたいだ。

「そういえば、僕達がまだ小学生の頃、凄い雨が降ったこと、覚えてる?あのときは、学校も休みになってさ。近所のばあちゃん家なんか、水が一階の部屋まで入って大変そうだった。」
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