流れ橋
覚えているに決っていた。わたしの家も、田中俊のばあちゃん家と同じくらいの被害を受けたのだから。
「わたしの家、この川の近くだよ。我が家も家がめちゃくちゃになったんだから。」今でもあの時のことを、思い出すと体が震えてくる。「大丈夫?有川、あの水害の時、和風の人形見つけたらしいけど、覚えてる?僕、その人形がずっとこわくて、飾ってある玄関のそば、一人では通れなかったよ。」彼は、少し心配そうな顔をして話した。
わたしも、彼と同じことを考えていた。
流れ橋を渡る時、わたしも、なぜか、水害の日に見たあの日本人形のことを思い出していた。人形のあちこちに土がついていて、あの当時、わたしは、部屋が暗くて見えにくいのも重なって、本物の人間が土に埋まっているように見えた。あの息が凍るような感覚。
何か、さっきから嫌な予感がした。わたしは、昔、感じたことがあるあの感覚を、また体験するような気がして、家に帰るのが恐かった。
「わたしの家、この川の近くだよ。我が家も家がめちゃくちゃになったんだから。」今でもあの時のことを、思い出すと体が震えてくる。「大丈夫?有川、あの水害の時、和風の人形見つけたらしいけど、覚えてる?僕、その人形がずっとこわくて、飾ってある玄関のそば、一人では通れなかったよ。」彼は、少し心配そうな顔をして話した。
わたしも、彼と同じことを考えていた。
流れ橋を渡る時、わたしも、なぜか、水害の日に見たあの日本人形のことを思い出していた。人形のあちこちに土がついていて、あの当時、わたしは、部屋が暗くて見えにくいのも重なって、本物の人間が土に埋まっているように見えた。あの息が凍るような感覚。
何か、さっきから嫌な予感がした。わたしは、昔、感じたことがあるあの感覚を、また体験するような気がして、家に帰るのが恐かった。