流れ橋
思った以上の早さで、自転車は、わたしの家に着いた。
わたし達は、自転車から降りて家を見上げた。家の様子は、今朝から何も変わってないように見える。

「お父さんのこと、誰かに連絡したのか?」田中俊は、家を見上げたままいった。

わたしは、大きく首をふる。「まだ、この事は、誰にもいってないの。家にいなかったら、その時は。」

わたしは、ノドがカラカラに渇くので、唾をのむ。 「その時は、連絡する。今から行ってくるから、ここで待っててね。」

田中俊は、黙って頷いた。

わたしは、感謝をしながら「じゃ、行ってくる。」と、気合いを入れた。

中に入る前、玄関の脇にある蘭ちゃんの犬小屋をチラッとみた。

蘭ちゃんは、寝息をたて気持ち良さそうに昼寝していた。

いつもと変わりない日常の風景に見える。

わたしは、ドアを開けて中に入った。

玄関に入ると、すぐにお父さんの靴を探した。すると、お父さんの黒い革靴が、隅の方にキチンと並べて置いてあった。
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