『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】


 第12話

 国道の上に架かる歩道橋。

街灯に浮かび上がる白い橋の上に集合するニコモン達。

ディレクターチェアーでメガホンを握っているのは藤木光隆だった。

ベンチコートから七輪まで用意するスタッフたちは端から見たら本物の撮影部隊のようだ。

「次は昭太郎が階段駆け上がって勇介を殴るシーンね、シーン12テイク1!」
メガホン越しに声を張る光隆。

階段下の国道沿いで待機する昭太郎。

 貴明がカメラアングルを確かめる。横で見守る真代。

綾乃がカチンコのように手を叩き、昭太郎が階段を駆け上がる。

肩をつかんで勇介を振り返らせた昭太郎はパンチを繰り出し、顔面を捉える。

顔を歪ませ、転がる勇介。

「カッート!ダメだよ勇介。もっと派手にぶっ飛んでくれなきゃ」
 メガホン声が聞こえてきた。

「まじで!?」

「そうだよ、3回転は転がってくれないと」と監督光隆。

「だって、ここには『殴られて転がる』としか書いてないじゃん」

「ばか、こういうのは派手にやって丁度いいの!昭太郎もう一回下からね」とすっかりディレクターぶりがサマになっている光隆。


由紀と綾乃は毛布にくるまりながらマックポテトを食べている。

「なんでこんな事マジメにやってんだろうね・・・」と綾乃がポテトを1本、口に運ぶ。

「ニコモンの新入部員の勧誘って言ってたけど」と由紀がポテトを1本。

「勧誘って、ただの遊び仲間じゃん、それに勧誘してるのみたこと無いんだけど」

「だよねー、でも、昭太郎がこないだ大人になってから観たら笑えるじゃんって言ってた」

「昭太郎らしいねぇ、でももう大人じゃん・・・」

「あと、この次の貴明さんと真代さんのキスシーンのために台本書いたって言ってた」

「らしいねぇ、バカだねぇ、やっぱ子供じゃん・・・」

「・・・・・・」と2人でポテトを2本。


 昭太郎は必要以上に息を切らしていた。
そして、足の痛みに苛立ちを感じていた。

「シーン12テイク2、はい!」
 光隆の張り切った声が歩道橋の上から聞こえてきた・・・。


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