『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第14話

 1ヶ月後、
昭太郎は会社の引き継ぎなどを終え、
制服の時代を過ごした山梨の実家に帰郷した。

実家は母親と妹が暮らす小さな一軒家。

父親とは高校1年のとき死別している。

山梨は東京に近いのだが周りがすべて山に囲まれていて、忙しさから隔離されている気がする。

仕事をしない安心感と高校時代の思い出が昭太郎を少し元気にさせていた。

 過去に自転車で走った路を車で走ることに違和感を覚えながら、近くの総合病院らしきところに入院を決めてきた。

「・・・ってことだから明日から検査入院するわ、かーちゃん!」と元気ぶって報告する。

 台所で昭太郎の好きなカレーを料理する母親は「入院には何が必要なの!」と忙しいことで張り切るように訊いてきた。

「パジャマと歯ブラシとかでいいんじゃない、まぁ売店もあるし、なんとかなるだろ」

(心配させまいと逆に気を遣わせちまったかなぁ・・・)
と考える昭太郎の思いは簡単に打ち砕かれた・・・。

妹の麻由美には彼氏との話を2時間も聞かされていた。

結婚すると言っている。相手は前に1度会ったこともある公務員の彼だった。

「今度ちゃんと会わせるからね、お兄ちゃん」
元気いっぱいで妹に言われたお兄ちゃん昭太郎・・・。

そう、よくよく訊いてみると母親も麻由美もあまり心配はしていなかった。

確かに痩せてはいるが普通に生活をして、車で帰郷した昭太郎にあまり不安を感じている様子はなく、何も変わらない日常を過ごしていた。

昭太郎だけが少しシリアスモードだったのだ。


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