『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第31話

 先制攻撃は「どこが悪いんですか?」これしかない。

 そして、初の獲物が喫煙所というクモの巣にかかろうとしている。

 車イスの男、年は30前後と思われる髭の男だ。

それもジャージ姿のベテランクラスだ。

若者系で病院寝間着を着ているのはビギナーでジャージ・スエット姿はベテランなのだ。

昭太郎は病院寝間着を着ている自分に少しのハンディを感じながら声をかけた。
「どこが・・・いや、入院は長いんですか?」

(おっとあぶねぇ、どこが悪いって足に決まってんじゃねぇーか、包帯グルグルだし、車イスだし・・・)

「はい、もう3ヶ月になります」

(すげー3ヶ月かよ、ありえねぇ・・・)

「いやー長いですね、僕なんか1ヶ月なんですけど、もう退屈でしょうがないですよ。」

「そうですか?何回か喫煙所でお友達と騒いでるのを見かけましたけど」

(まじかよぉ、なんで知ってんだよ、1ヶ月いるけど俺は誰も知らねぇーぞ!)

「そうですか、で、その足はどうしたんですか?」

「バイクに乗ってて、車に突っ込んじゃったんですよ」

「事故ですか?」

「そうですね、13カ所骨折してICUにいたときは緑のこびとが見えましたよ」

「そんな凄い事故だったんですか?」

「俺がハーレーでベンツの横に思いっきりタックルしたような感じになっちゃったんで、まぁ細かい記憶は無いんですけどね」

(ハーレー?髭もフルに決まってるし、ちょっと怖い人なのかぁ・・・)

「何階にいるんですか?」

「5階西病棟、5西ですね」

「じゃぁ、僕は7西です」

「5西にはカワイイ看護婦がいるんだよ」

「まじっすか!」
 なんて感じで会話は続いた。

予定など無い2人は夕飯の時間まで盛り上がることになる。

 髭車イスの男の名は佐野。年齢は25歳、昭太郎より2つも年下であることが判明した。

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