『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第55話

 退院の日がやってきた。
と言ってもそれは同時に転院の日でもある。

 ナースセンターに挨拶に行き、世話になった看護師達にお礼を言って回る昭太郎。

気付けば7西の全員の看護師の名前と顔が一致していた。

 最後に年輩の婦長が昭太郎に近寄り耳打ちした。
「あなた、いいお友達をもっているのね、あなたには言おうかどうか迷ったんだけど、自白するわ。先日病院に電話がかかってきたのよ、移植のドナーになるって言い張る人がいて、どうしたらいいのかってしつこく訊かれたわ。私はそういうことはここに電話されてもわかりませんって答えたけどね。女の人だったわよ。確か木村さんって言ってたわ、モテるのね」

昭太郎は頷きながら左手を額について目線を隠し
「そんなんじゃないですよ・・・」と少し照れたように囁いた。
(綾乃かぁ・・・何も言わずに直接病院に電話ねぇ・・・、やられたな・・・。俺は何を戸惑っているのだろう・・・。)


「綾乃?俺、病気のこと直接言わないでゴメンな」
 綾乃の携帯に電話をかけていた。

「しけた声してるわねぇ。昭太郎はチンケな病気じゃなくてデカイ病気じゃなきゃね」

「なんだそれ・・・」

「そのトーンも、らしくないわよ!」

「そうか?」

「そうよ、昭太郎なら乗り越えられるから大丈夫よ」
綾乃のあっけらかんとしたメチャクチャな発言は昭太郎に元気を与えていた。

「チンケな病気じゃなくてデカイ病気じゃないとらしくないか・・・」と呟いた。

< 57 / 235 >

この作品をシェア

pagetop