天使の足跡
今何時かな、と見た時計が11時を過ぎていた頃。
部屋掃除の真っ最中に、突如ベルの音が鳴り響いた。
滅多に尋ねてくる客もないこの部屋に、一体誰だろうと不審に思いながら玄関に向かうと、応答もしないのにドアが開いた。
「ちわー」
「げっ──!!?」
訪問者は、同じバイト先の友人、大野だった。
(しまった! 鍵かけとけばよかった!!)
「よう、最近バイトこないんで、様子見に来てやったぞー」
「『来てやった』って何だよ」
「へえ、結構いい部屋じゃん」
僕は何とか玄関で押さえようとしたが、その前に大野は我がもの顔で、ドカドカ部屋に上がりこむ。
「ま、待っ──!」
(そっちには太田が……!)
「あれ?」
大野は太田を見て、太田は大野を見て、動作が止まる。
古い雑誌を抱えていた太田が軽く会釈をすると、大野も会釈する。
(わぁー! 遅かったか!!)
僕は気の利いた説明を考える余裕もなく、口から出任せに言った。
「その、こいつはっ──!」
「まさか噂の『あの──』」
大野が口走る。
『あの子』と言いそうになったところを僕が慌てて遮った。
「違う! 僕の従兄弟!!」
「……え? イトコって、南高校の女の子じゃなかったっけ?」
「そ、それは父方のだから! こっちは母方の! それに掃除もこいつがいるから間に合ってるから大野は戻ってもいいよもういいから帰って早く」
部屋掃除の真っ最中に、突如ベルの音が鳴り響いた。
滅多に尋ねてくる客もないこの部屋に、一体誰だろうと不審に思いながら玄関に向かうと、応答もしないのにドアが開いた。
「ちわー」
「げっ──!!?」
訪問者は、同じバイト先の友人、大野だった。
(しまった! 鍵かけとけばよかった!!)
「よう、最近バイトこないんで、様子見に来てやったぞー」
「『来てやった』って何だよ」
「へえ、結構いい部屋じゃん」
僕は何とか玄関で押さえようとしたが、その前に大野は我がもの顔で、ドカドカ部屋に上がりこむ。
「ま、待っ──!」
(そっちには太田が……!)
「あれ?」
大野は太田を見て、太田は大野を見て、動作が止まる。
古い雑誌を抱えていた太田が軽く会釈をすると、大野も会釈する。
(わぁー! 遅かったか!!)
僕は気の利いた説明を考える余裕もなく、口から出任せに言った。
「その、こいつはっ──!」
「まさか噂の『あの──』」
大野が口走る。
『あの子』と言いそうになったところを僕が慌てて遮った。
「違う! 僕の従兄弟!!」
「……え? イトコって、南高校の女の子じゃなかったっけ?」
「そ、それは父方のだから! こっちは母方の! それに掃除もこいつがいるから間に合ってるから大野は戻ってもいいよもういいから帰って早く」