天使の足跡
念を押して教室内に戻っていく癒威と入れ替わりに、丹葉が三谷の隣に立つ。
癒威のパンにかじりついた。
「やっぱりおごってあげたんだ?」
「おう。……って、てめェが食ってんのかよ!」
飲み物までちゃっかりいただいている。
またおごりなおさなくちゃなと思いながら、その隅では取り留めもない考えが渦巻いていた。
「あのさ」
ぼんやり庭を見下ろして、丹葉に話しかける。
「太田って、何か隠してるんじゃないかな」
「そりゃあ、人間だもん、隠しごとくらいあるだろ。三谷がオープンすぎるだけだよ」
「違う、そういうことじゃなくて、ええと……」
説明に困って頭を掻く。さらに腕まで組んだ。
「トイレで、太田を見かけたんだ」
「まあ、普通だよな」
「個室から出てきた」
「人間だもん、そういうこともたまにはあるんじゃないか?」
「それも蜂合わせる度にだぞ」
「そこまで見てんの? 三谷クンてば、ヤラシー!」
「違う! 俺が言いたいのは……、その……!」