愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「そんな顔しちゃダメだ」


香椎くんに手を引かれ、岳尚様や香純さんが待っている場所に戻る途中で、そんなふうにやんわりとした声が降ってきた。


「このまま連れ去りたくなる」


だったら連れ去ってくれたらいい。

そうしたら、私は好きでもない人と結婚することもないんだし。


「でも逃げたら意味がない」


どうしてそんなことを言うのだろう?

振り返った香椎くんは困ったような、でもすごく決意に満ちた顔をしていた。


「キミがさっきみたいに『普通に笑える』未来を掴むためにキミの執事になったんだから」


立ち止まって見つめる香椎くんの瞳が力強くて、なんにもされていないのに息が出来なくなりそうだった。


「セリ……オレは……」


真っすぐに香椎くんの長い指が私の頬に向かって伸びてくる。

息を飲む。

香椎くんの顔が近づいてくると思ったそのときだった。


「はい、そこまで」


冷たい声とともに、香椎くんの身体がグラリと揺れて……

ちょっとなに!?

なにがどうなってるの!?


香椎くんの身体がその場に落ちて行く。

うつ伏せに倒れ、微動だにしない香椎くんの背後には……岳尚様が冷ややかな笑みを浮かべて立っていた。
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