【短編】クリス王子とセシル姫
「そうよ」

セシルが頷く。

「ずっと疑ってたんだけど、ここに来る途中確信したわ。
私、馬車に酔ったことなんて無かったもの。
体も疲れやすくなるんですって」

その言葉に、クリスは昼間のセシルを思い出した。
やたら気持ち悪いと言っていた。

でも今まで彼女が馬車に乗ってそう言ったことが無かったから、てっきり自分のキスに対してそう言われたのかと思ったんだった。

言葉も出ないクリスに構わず、セシルは言葉を続けた。

「さっきアーサーに頼んで、専属の医師を手配してもらったの。
本当は戻ってから診て貰おうと思ってたんだけど」

「待って、、、」

クリスはセシルの言葉を制すると、少し考えるような間をおいた。
ここしばらくを遡って思い出す。

「でも前に”月のもの”だから、ダメだって、、、」

「あはっ!そうよね」

セシルが笑った。「ごめんね。嘘ついて」

「―――嘘ぉ?!」

声をあげるクリスに、セシルは「すみません」と頭を下げて見せた。

しばらく呆然としていたが、クリスは我に返るとまたセシルに向き直った。

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