【短編】クリス王子とセシル姫
「なんで嘘ついた?」

「だって、、、。
もしかしてって思ったけど、違ったらガッカリさせるじゃない。
あんまり早いと診てもらっても分からないみたいだし。
でも可能性はあるから、一応夜の方は控えて、、、」

物凄く力が抜けていくのを感じる。

なんだそれは。
なんなんだ、それは。

クリスは思わず頭を抱えた。

「、、、そう、言えばいいじゃん」

「言ったほうがよかった?」

「当たり前だろっ!」

クリスは勢い良く返した。

「あんな風に避けられるくらいなら、
一緒にガッカリするほうがずっといいよ!!」

セシルが目を丸くしている。

その顔を見てクリスは我に返ると、自分を落ち着けるようにふぅっと息を吐いた。
そしてまた目を伏せる。

「、、、俺に触られるのが、嫌なんだと思ってた」

クリスの小さな呟きとともに、また2人の間に沈黙が流れる。

やがてセシルが伺うように、「ほんとに?」と問いかけた。
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