【短編】クリス王子とセシル姫
「ほんとだよ、、、。誰だって思うよ」

「でも、今更、、、。
私、クリスは薄々気付いてるんだと思ってたけど、、、」

「気付いてなかったよ。
分かるわけないよ」

「そうなんだ、、、」

クリスが部屋を訪れなくなっても、セシルが全く気にする様子が無かったのはそういうわ
けだったのかとやっと理解できた。

我慢比べしてるつもりだったけど、全く笑えるほどに独り相撲だったのだ。

「―――ごめんね、、、」

セシルが呟いた。

とっさに何も言えずクリスは俯いたまま黙っていた。
怒りは無いのだが、ただひたすらに恥ずかしい。

1人で悶々としていた自分が。

「クリス、、、」

セシルが寝台に手をついて、身を乗り出した。

セシルの気配に顔を上げる。
それと同時に、クリスの唇にセシルの唇が重なった。

優しく触れて離れる。

< 30 / 42 >

この作品をシェア

pagetop