半熟cherry

一美と私はキッチンで夕飯の支度中。

カウンター越しに2人の様子を見ると。

ブツブツ言いながらもプリントを進めてる。



……よしよし、偉いぞ。





「…さっきさ〜」

『ん?』



何種類かの野菜をみじん切りにして作った野菜スープの味見をしながら。

一美が話しだした。





「逢沢クンのコト“郁”って名前で呼んだよね」





一美はスープの入ったお鍋に視線を落としたまま静かにそう言った。


『……そう、だった?』



声が、うまく出ない。



……マズイ。

学校にいるときは意識して“逢沢クン”って呼んでるケド。

家にいたから何も考えてなかった。



意識してないから。

“郁”って出ちゃったんだ…。



 

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