この想いは・・・。
「へぇ―、ずっと噛みながら挨拶してくる人はジュウくんだったんだ」
「あの、俺武田剛志です」
「へぇ―、まともな名前あったんだ」
「おい、失礼だな」
呆れながら言うと先輩はゴメンと笑って言った。
「懐かしいね。ジュウくんはあたしのこと知らなかったでしょ」
まただ・・・俺は武田剛志だって・・・。
「知ってましたよ。先輩有名人でしたし」
「あたしがっ!?」
なんで本人が驚いてんだ?
「はい」
「あたし10円ハゲなんてできてないし、有名人になれる訳ないよ」
「おいおい」
俺の反応を見て先輩は笑う。それがなんだか心地好い。
「おい、ジュウ。もう少しで遅刻になるぞ」
畠田の一言で現実に戻った気がした。
そういえば今から仕事だ。
「本当だ、もうこんな時間。ジュウくんともう1人の人、お仕事頑張ってね」
「はいっ」
「あの人、顔は可愛いいのに失礼だよな・・・」
エレベーターに乗ると今さっきの暁先輩との会話が夢のように感じてならなかった。
あの暁先輩と普通に話せた・・・―――――