煌めきの瞬間
やだ……。
こんな所で泣きたくないのに、目頭がジーンと熱くなる。
わたしは唇を噛み締め、体育館から走って逃げた。
「春香……!」
美鈴の声が聴こえたけど、振り返る事が出来なかった。
上靴のまま中庭に飛び出したわたしを、後ろから誰かが追ってくる。
それでも、全てから目を逸らすように走り続けた。
「待って! 春香ちゃん!」
大地……くん?
そう思った時、左腕をグイッと掴まれ足を止めた。
「大地……くん……」
「春香ちゃん、足速っ……」
「ごめ……」
「春香ちゃんてさ、鬼ごっこをすると、鬼の時は足遅いけど、逃げ役の時は速いタイプだったでしょ?」
「え……?」
大地くん?
何を言ってるの?
キョトンとしたわたしの顔を見て、大地くんはにっこりと笑った。