Bad Girl~不良少女~
それは親父も同じだったようで、うちの隣に腰掛けたまま香矢を見上げている。
「前にじいに連れられて岸田組に行ったとき、組長と信二に会ったことあんだよ」
言いながら襖を閉めて、そこに寄り掛かるようにして立つ。
「あーなるほど…」
同じタイミングで納得の言葉を発したうちと親父。
「俺の質問に答えろよ」
口調はキツイけど、雰囲気は柔らかく、別に怒ってるわけではないようだ。
「あ、悪ぃ悪ぃ。何しに来たって言ったか」
組長が気を取り直した様子でキリッとした表情になる。
小さく香矢が肯けば、組長は少し間を置いて話出した。
「この家が買収されそうになってるって話は、前に稜としたから知ってるし、うちも買われそうになってたのも知ってるな」
うちがさらわれて、信二が連れ去られたあの日。
組長とそんな話をしたのを思い出す。
「その話が、綺麗さっぱり消えちまったって知らせをしに来た。
ここ最近ずっと栗崎家の遣いのモンから″我々の下に入りませんか″って誘いがしょっちゅう来てたんだが、今日の電話で今までの話はなかったことにしてくれと言われた」
その一言で、栗崎が行っていた言葉を思い出した。
″なにも心配しないで、一緒に居られる日は、もう少しだから″