不思議病-フシギビョウ-は死に至る
――海。
海が見えた。
最初は入り江だけ、次第に湖ほどにしか見えなかった水溜りの果てが消える。
やがて、空と海の境界がわからなくなった。
思わず感嘆の息がもれる。
「――これが海というものか」
「ナオキ、キミの住んでいる町は海に面していなかったかい?」
「ああ、よく歩いて行ったぜ」
それにしても――山の上から見る海は、また違って見えた。
浜辺が砂ではなく、大きな石で埋め尽くされていた。
海が紺と深緑を混ぜたような色をしていた。
オレたちの地元の海は、ここまで深い色をしていなかったと思う。
キレイ、というよりか、
「漁業用?」
「海水浴場って感じじゃないね」
当たり前なのかもしれないが。
オレたちは水浴びをしに来たわけじゃない。
それにはまだまだ寒い。
「カッター――舟をこぐんだっけか」
「お、ナオキがめずらしく予定通りのことを言ったよ」
「オレを侮らないでいただきたい」
キョウスケやカナコが言っていたことを思い出しただけだが。
「でも、今からはちょっとつらくないか?時間も遅いぞ」
ケータイの時計を確認してみれば、午後四時。
準備や実際に海に出る事を考えると日が暮れるんじゃないか?
「カッターは明日。今日の残りの予定は夕食と部屋の用意と集会があるくらい」
集会か、メンドクサイな。
しかし、それを除くと大きな予定もない。
「今日は到着だけ、かよ」