不思議病-フシギビョウ-は死に至る
だが……キョウスケに負けたじゃないか。
「案外、周りが見えていないのな……」
「……そうだったかもな」
エイヤは力なく笑った。
その横顔は寂しそうに見えた。
「エイヤはそんなに自分の腕に自信があったのか?」
最強の名が奪われて凹んでいるように見える。
「違う」
「じゃあなんだよ」
エイヤは言い渋る。
……地雷臭がするぞ。
しかし、エイヤは何か観念したらしく、簡単に口を割った。
「……今みたいに、他人とのケンカでサヤを泣かせたことがあった」
本当に聞いてはいけないことだった。
「俺が目を付けられていたころで、ケンカのときにサヤが偶然一緒にいた。幼馴染だったサヤに迷惑かけたくなかったから」
エイヤは遠く、その日の情景を見ていた。
「で、勝ったには勝ったんだがちょっとケガして……あたしのせいだってサヤは泣いた」
でも俺は、とエイヤは続ける。
「俺は他人にケンカを売ることでサヤを危険な目にあわせていたんだ。本当に悪いのは俺だ。全部俺のせいだった」
そしてエイヤは口にする。
「だから、俺は言ったんだ。『こんなことはきっぱりやめる。もう誰も危険な目にあわせない。でももしサヤが危なくなったら』……」
『そのときは、俺がお前のこと守る』