時雨
帰り道、心弥は私に
「遥太、笑ってた。」
と、言ってきた。
「そっか。」
「うん。いつもは
あんなに笑わないから。」
「…綺麗な人だよね。」
「ん?」
「汚れてない。」
心弥は困った様に
「…いい奴だよ。ほんとに。」
と、一言呟いた。
うん。分かるよ。
あんなに綺麗に笑う人
見たこと無いから。
あんなに太陽みたいに
綺麗に笑う人
見たこと無いから。
心弥が「いい奴だよ。」なんて
言ったのも初めて聞いたから。
心弥は、誰にでも平等。
誰とでも仲がいい。
だから、男女関係なく
人気がある。
でも、心弥は
“自分に興味を持った人"は
絶対に信用しない。
“自分が興味を持った人"には
絶対の信用を置く。
“自分に興味を持った人"を
「いい奴」なんて絶対言わない。
その心弥が興味を持って
「いい奴」って言ったんだから
ほんとに“いい人"
なんだと思う。
「俺、遥太が笑うとこ
何回も見たこと無いんだ。」
「うん。」
「どんなに馬鹿やってても
目だけは笑ってなくてさ。」
それ、心弥もだよ。
「うん。」
「どうしたら笑わせられるんだろなぁ…
って考えててさ、
でも今日は、ほんとに笑ってた。」
「…太陽みたい、だね。」
「でも、今日遥太と
同じくらい海莉も笑ってた。」
私……が?
「びっくりした。」
「…。」
「俺がずっとしたかったことを
遥太は一瞬でしたんだ、
って思った。」
「…。」
「ちょっと悔しかった。」
「ごめ…「誰も謝れなんて
言ってねーよ。」
心弥は、少し笑って
「遥太はきっと海莉にとって
影響あるよ。」
と、言った。