苦くて甘い恋愛中毒
「…菜穂はすげえいい女だと思う。でも、付き合うことは出来ない。菜穂がどうとかじゃなくて、誰とも付き合う気はないから」
――なに、それ。
「…どういうこと?」
さっき発した言葉の意味を知りたくて、尚説明を求める。
「俺の中では仕事の優先順位が絶対1番で、それが変わることはこれからもない。はじめはそれでもいいって言っといて、最後には自分から離れてく」
目を伏せたことで、彼の長いまつげが影を落とす。
誰かを、思い出しているのだろうか。
でも。それでも。
私は。
「それでもいいよ。要さんには何も期待しない。ただ、私が勝手に好きでいる」
“私のこと、好きじゃなくても構わない”
それなら、いいでしょ?
それでも、側にいたいの。
しばらくの沈黙の後、要さんはゆっくりと私に近づいてその綺麗な指で私の涙を拭った。
「みんな最初はそう言う。なのに勝手に傷ついて、被害者ぶって。…もういい加減うんざりなんだよ。だから、お前もやめとけ」
“もったいねぇだろ。もっといい恋愛しろ”
何でそんな中途半端に優しいことゆうのよ。
狡いって言ってるのは、そういうところなんだってば。
「だったら、なんでキスなんかしたの。メールなんてしてきたの!
散々人のことすきにさせといて、今更やめとけって勝手すぎる!!」
「キスなんかただの出来心だ。お前もはたち過ぎてんだからそんくらい分かれ」