苦くて甘い恋愛中毒


三時間後、私は雰囲気のいい青山のレストランにいた。
メッセージを送った直後に朋佳から返信がきて、待ち合わせをすることになったのだ。

「ごめん、菜穂ちゃん。待ったでしょ?」

そう言いながら、少しぽっこりとしたお腹の朋佳が小走りでやってきた。

「全然大丈夫。走って大丈夫なの?」

走ったりなんかしてお腹の子に影響はないのだろうか。
残念ながら、今だ妊娠も出産も経験していない私には分からないけれど。


「割れ物入れてるんじゃないんだから。それにふたり目なんだし、慣れてるよ」

久しぶりに会った朋佳は、なんだか前よりしっかりしているように見えた。
あんなに甘えたな子だったのに、母は強しって本当なんだな。

3年以上も経てば成長してあたり前か。

私は、成長できているのだろうか。


ふたりでランチを食べながら、近況やくだらないことを話す。

まるで大学時代に戻ったみたいだ。
大学のときもこうしていろいろ喋っていた。

あの先生は実はゲイらしいとか、誰と誰が付き合っているとか、朋佳の恋愛相談や好みのタイプ、中には食堂のおばちゃんの噂話まで。
端から見たら、くだらないと思うことを延々と喋っていた。時には、夜通しで。
そんな、何気ないことがすごく楽しかった。


「そっかぁ。今でもあの人と付き合ってるんだ」

付き合っている、というのが正しいのかどうかは微妙だけど、それ以外にぴたりとくる表現が見つからず、とりあえず黙って頷いた。

「もう3年以上になるのか。長いねー。懐かしいな、あのときはこんなに続くなんて思わなかった」

そう言って優しく微笑む。
私と要の曖昧な関係を知りながらも、朋佳は否定も肯定もしない。

「私がいちばん驚いてるよ。絶対彼氏と1年以上続かないジンクスあったのに」

「菜穂ちゃんはなかなか本気にならないけど、本気になるとしつこいんだね」

「しつこいってなによ。一途って言ってよね」



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