苦くて甘い恋愛中毒
車の中は、変わらず沈黙だった。
私も彼も何を話すわけでもなく、ただ黙って過ぎていく景色を眺めていた。
ちらほらと見えるイルミネーションを見て、もうそんな時期なのかと思った。
「……お前、寒くないの?」
急に言葉を発するから、驚いてしまった。
それと同時にドレス一枚の自分の姿に気付く。
コートはしっかりと私の腕に収まったままだ。
指摘されると、急に凍えそうなほどの冷気を感じる。
「寒く……なってきた」
慌ててコートを羽織る。
馬鹿だろ、と笑みを浮かべる運転手に、私の心臓がいきなり速くなった。
本当に、にも変わらないんだな、私って。
「似合うな、ドレス。なんか、お前っぽい」
前を向いて、平然と運転しながらさらっと言ってのける。
ほんの数分前までこの漆黒が憎くて仕方なかったのに、そんな気持ちどこかへ消え失せてしまった。
桜色なんて、もう思い出せないくらい。
「ありがと。でも、きれいなのはドレスだけ?」
「はいはい。お前も綺麗だよ」
適当にあしらうような言葉にさえ、いちいち反応して体温が上昇する。
私も一度でいいから、その余裕を崩してやりたいと思うのに。
いざ要を目の前にすると、自分を取り繕うことも、得意のポーカーフェイスも、全くその意味を為さなくて。
いつも、私の心だけが丸裸にされてしまう。