Monsoon Town
大好きな人を抱きしめたからだ。

大好きな人の体温。

大好きな人の匂い。

全てに、ボロボロと目から涙がこぼれ落ちた。

「――陣内さん、わたし…」

震える声とこぼれる涙が邪魔をする。

あの夢を見た恐怖がまだこの躰に残っている。

「何も言うな」

泣いている赤ん坊をあやすような声で、陣内が言った。

背中に両手が回ったかと思ったら、ポンポンと優しく背中をたたかれた。

「怖かったんだろ?

だから、何も言うな」

優しく背中をたたきながら、陣内が言った。
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