恋して、チェリー
ガムを噛んでいない、もう片っぽの男子があたしに手を伸ばしてくる。
その手があたしの頬に触れるよりも先に
――パシ……ッ
乾いた音と
「痛ってぇな」
ほぼ同時に、イラついた声が静まり返る教室に小さく響く。
「そんなんじゃ、ない……っ」
キッと睨みつけたつもりだけど、溢れた涙のせいでこんなの何の効力も持たない。
“男好きで誰とでもすぐヤる女”
いつの間にかあたしの背中に張り付けられたレッテル。
小さい頃から恋愛体質で
恋に全力でいて、何が悪いの。
確かにいままで恋した男の子は数知れず。
付き合った人数は、人より多いかもしれない。
でも、それは……ひとりひとりを全力で好きになって、その先に待つハッピーエンドを夢見て。
今までの恋がすべて、成就した訳じゃない。
本当に好きになった人にしか、自分の全ては見せないし、
体だけ求めてきた人もゼロって訳じゃなかった。
決して、自分の体を安売りした覚えなんてないし、
好きになってくれた人を全力で愛して何が悪いの。