私的恋愛*シテキレンアイ






「退いて……?」
雪都が小首を傾げて
退くよう伝えても
退かないところをみると、
雪都にもっと、かまってほしいのだろう。
それを察して
ハヤテを愛しく思う反面、
早く退いては、くれないかと願っていた、そんな時だった。






「退けい!」
耳に入った、大声と共に
体に掛かっていたハヤテの体重がなくなったのだ。


「大丈夫か、雪都!」
「うん、僕は大丈夫」
良かったと、柔らかい笑顔で微笑む、整った顔。



そこに立っていたのは、
ハヤテをだかえたユワタローだった。


「……おはよう、ユワタロー」
上目遣いに、ユワタローを見上げると、顔が真っ赤になる彼をみて、いつも雪都は疑問に思っていた。


「どうしたの?」
一体、何が起きているのだろう?
無意識で小首をかしげながらユワタローをのぞきこむ。


「……っ、ばか」
顔をプイと背けてしまった。
「……?」
良くわからないユワタローの行為に?マークが頭を支配する。


「雪都、」
ふいに捕まれた右手首。
少し、ユワタローの手が暖かく感じる。


「行こ」
片手でハヤテを抱え込んだまま、家の方へ進んでいく彼の背中を見つめながら。


「はい、ここでハヤテとはバイバイ」
そういって、ハヤテをおろし、家の中へ入る。
もちろん、雪都の手首を掴んだまま。



静かな空間に、扉のしまる音が響く。



「ふう、一件落着」
額に吹き出た汗を左腕で拭き取り、そのまま左手首を上下させて仰ぐ。



「ユワタロー……」
「ん?」
「これ、こーちゃんから」


こーちゃん。
雪都の親代わりであり、
この国を掌で転がしている謎多き支配者、水葉紅庵のこと。



ユワタローは彼のことが嫌いだ。
理由なんて一つしかない。
……大好きな雪都の想い人だから。





< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop