未来観測
ゾクッとするほどの瞳の強さ。
全体的に身体の線は細いのに、どこにそんな力が隠されているのかと不思議に思うくらいに
彼は強くあたしの腕を引っ張り、自分の方へとあたしの身体ごとを寄せた


「…先輩。」


さっきまであたしを支えてくれていた男の子が“彼”のことをそう呼び
唖然とした表情で彼を見つめる

それもそうだろう。
ただあたしを支えていただけなのに
“触るな”だなんて突然どなられたら驚くに決まってる。


緊迫した空気がさっと廊下を流れる中
後ろからそれをフォローするように、下崎君がかけつけた


「おいおい、広瀬〜
お前サッカー部だろ?
だったら怪我の対処くらいちゃんとしろよ〜。

そんな支え方じゃこれ悪化するだけだって。」


彼の一言によって、一瞬で場の空気が和む
そういうことだったんだって自分を納得させるように。

でも。
一方であたしを支えている“彼”は
周りのほんの少し疑惑の入った視線もお構いなしの様子で、更にぐっとあたしを引きつけた


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