君が嫌いな君が好き
ドアに背を預け、若干の黒い笑みを浮かべる悠斗。
「俺がいなくなったと思った?」
『っそ、そんなわけ…』
「嘘。
じゃあ、なんでそんなに慌てて起き上がったの?
歩けないくらいフラフラなのに」
『っ…』
「ねぇ?
なんで?」
悠斗はゆっくりと捺に近づいた。
「捺……」
『っ』
悠斗は捺の目の前に来ると、しゃがんで捺に目線を合わせた。
「…ね、なんで?」
『っべ、別に……』
「ホントに?」
悠斗は、じりじりと距離を縮めていく。
『っ』
捺は、キスしそうなくらい顔を近づけられて、ビクッと震えた。
それを見た悠斗は、顔をパッと離した。
(捺のこんな顔を見たいわけじゃない)