君が嫌いな君が好き
卵粥を食べ、捺は薬を飲んだ。
「なっちゃん、なっちゃん」
『?』
「【お薬飲めなーい☆】とかないの?」
『なんで?』
薬を飲んだ捺に、悠斗は話しかけてきた。
「だって、【じゃ、口移しで飲ませてあげる☆】とか言えないじゃん」
『言わなくていい。
それに、錠剤だし直ぐ飲んじゃえば味分かんないし。
薬が嫌い、なんて言う可愛いコじゃないし』
捺は、コップをベッドの近くのミニテーブルに置いた。
「捺は充分可愛いよ」
捺、と呼ばれて若干動揺する捺。
「…捺、大好き」
悠斗は、微笑んだ。
すると、捺は悠斗に話しかける。
『ねぇ、ホントの悠斗はどれなの』
「へ?」
『私といると、シスコンキャラの馬鹿口調なのに、友達には普通の口調。
悠斗の素はどれなの』
「……」
思いがけない質問だった。
確かに、自分は捺にはデレデレ口調だが、他では普通だ(シスコン話ではデレデレだけど)。
そう悠斗は、思った。
だが、はじめから答えは決まっている。
「馬鹿だなぁ。
捺が見てる俺が悠斗だよ」
若干、複雑な言葉に捺は眉間に皺を寄せるが、直ぐにうつ向いて悠斗の頬を触った。
『悠斗は悠斗』
捺が少し微笑むと、悠斗は満面の笑みで返した。
(俺は捺に俺を見せてるつもりだよ)