君が嫌いな君が好き
「捺!捺っ」
捺は涙を流しながら、力無くベッドへと倒れこんだ。
「な、捺っ」
それを見た悠斗は、慌てて捺に駆け寄った。
「っどけ!!」
悠斗はベッドの前に立つ叔父を押しのけて、捺の背中に手を回して上半身を起こさせて焦りながら声をかけた。
「捺っ、おいっ…」
捺の背中は汗でびっしょりで、額に手を当てれば凄く熱く悠斗は目を見開いた。
『…は、…ぁ…』
捺は熱のせいで息が上がり、苦しそうに眉を八の字にし眉間に皺を寄せていた。
「び、病院っ…」
「おい、悠斗バイトはどうした」
「そんな所じゃないだろ?!
捺、熱出してんだぞ?!」
「っ誰に口聞いてんだよ!!!」
ドガッ!!
「っぅ゙…」
悠斗の言葉にキレた叔父は、悠斗の頬を殴った。
悠斗の口の中には、鉄の味が広がる。
「っ…」
「明日、バイト行かなかったらそのガキを殺すからな」
そのガキ、きっとそれは捺のことだろう。
殺す、だなんて恐らくは脅しだ。
だが、悠斗にとってたとえそれが脅しなだけであろうと、捺を失うことはとても恐ろしく感じるのだ。
叔父は悠斗の頭を一殴りすると、部屋を出ていった。
「っ…」
捺を抱き上げる悠斗は震えていた。
「っちくしょ……
捺っ……守ってやれなくて悪ぃ…っ」
悠斗はそう言うと、捺を再びベッドに戻し、病院に行く用意を始めた。
(捺…苦しい、よな……ごめんな…っ)